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任意整理における統一基準遵守に関する意見書
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2011年(平成23年)12月7日
更生会社 株式会社武富士
管財人 小畑英一 殿
栃木県弁護士会
会 長 横 山 幸 子
第1 意見の趣旨
貴社は,利息引き直し計算後に残債務を有する多重債務者との和解交渉において,「多重債務者に対する任意整理を処理するための全国統一基準」を遵守されたい。
第2 意見の理由
1 「多重債務者に対する任意整理を処理するための全国統一基準」(以下,「本件統一基準」という。)では,多重債務者に対する任意整理において弁護士が最低限遵守すべき事項として,「第1 全取引経過の開示請求をすること,第2 利息制限法の利率に基づく残元本の確定をすること,第3 和解案の提示に当たっては,それまでの遅延損害金,並びに将来の利息は付けないこと」を挙げる。
同基準の趣旨は,多重債務に苦しむ国民の経済的再生及び生活再建に資するためであり,これは任意整理手続が他の債務整理手続と同様に,依頼者の経済的再生及び生活再建に資することを目的とし,裁判外の手続とはいえ,法的整理に準じる性質のものであることに基づく。
そして,同基準は平成12年の日本弁護士連合会における多重債務者救済事業拡大に関する協議会において採択され,その後全国の単位弁護士会において同基準もしくはこれに準じた各単位会の基準を制定して運用されてきた。
同基準が採択されてから近時に至るまでには,ほぼすべての消費者金融会社が任意整理において本件統一基準を受け入れた運用を行ってきたところであるし,法的整理手続である特定調停手続やその17条決定においても裁判所は同基準を尊重し,原則として元本のみでの和解をすべきとの運用を行ってきた。
かかる実務の運用からは,本件統一基準は,現在において,任意整理における法規範ともいうべき地位を有しているといえる。
2 ところが,更生会社は平成22年10月31日に会社更生手続き開始決定がなされた後,本件統一基準に基づく和解を受け入れないという姿勢を示している。すなわち,更生会社では,引き直し計算後に多重債務者に残債務が残る事案において,多重債務者側が本件統一基準に沿った合理的な和解案を示しているにも関わらず,一括弁済を求めたり,また,分割弁済であっても,経過利息,将来利息,遅延損害金を付さない限り和解に応じない等の対応をしている。
貸金業者である更生会社が自己の債権回収にのみ固執して上記のような対応を取れば,本件統一基準を遵守している他の貸金業者との間での公平性が害されるだけでなく,多重債務者の弁済計画そのものを困難にさせる。
また,更生会社のように,一部の貸金業者が本件統一基準を遵守しないことで,貸金業界全体に基準を軽視する兆候が見られるという弊害も生じている。
なお,裁判例には,貸金業者は,債務整理が円滑に進行するよう協力する立場にあり,取引履歴開示義務及び弁済方法について交渉に応じるべき義務があるものであり,この義務に違反して債務整理に誠実に協力する態度がない場合には,最終取引日以後の利息及び遅延損害金の発生を主張することは信義則違反,権利濫用となると判示したものがある(相馬簡裁平成18年2月1日判決)。
弁護士が提示する和解案は,債務者が出費を切り詰めた最大限の譲歩案である。本件統一基準は,多重債務者の経済的再生というコンセンサスを前提として,貸金業者と多重債務者側の両者が長年にわたり尊重してきた基準であって,一部貸金業者の強硬手段によってその実効性が失われることがあってはならない。
我々は,任意整理において,一部貸金業者による本件統一基準を軽視した対応に断固抗議するとともに,貴社においては,本件統一基準にのっとった任意整理に応じることを求める。
以上