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最低賃金の大幅な引き上げを求める会長声明
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中央最低賃金審議会は、昨年、全国加重平均43円の引上げを答申し、その結果、栃木県の引き上げ額は41円となり、最低賃金時間額は954円に改定された。
栃木県における最低賃金時間額954円という水準は、1日8時間、週40時間働いたとしても、月収約16万6000円、年収約199万円にしかならず、ここから税金、年金や健康保険料等を支払うのであるから、この金額では労働者が賃金だけで自らの生活を維持していくことは困難である。
我が国の相対的貧困率は依然として15.4パーセント(2021(令和3)年)と高止まりしており、特にひとり親世帯の相対的貧困率は44.5パーセントと経済的に極めて苦しい状況にある。働いているにもかかわらず貧困状態にある者の多数は、最低賃金付近での労働を余儀なくされており、最低賃金の低さが貧困状態からの脱出を阻む大きな要因となっている。
2010(平成22)年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」では、2020(令和2)年までに最低賃金時間額を全国加重平均1000円にするという目標を定めていた。
確かに、2023(令和5)年の最低賃金の全国加重平均は1004円と初めて1000円を超えた。
他方で、同年の消費者物価総合指数が2020(令和2)年比で5.6パーセントの上昇し、25か月連続で実質賃金がマイナスとなり(2024(令和6)年4月時点)、過去最長を更新している。依然として賃金の伸びが物価の上昇に追いついていない。同月の消費者物価指数は総合で前年同月比2.5パーセントの上昇、生鮮食品は同9.1パーセントもの上昇となっている。政府は、電気代・ガス代の負担軽減策である「電気・ガス価格激変緩和対策事業」について、同年8月から3か月間復活させると表明しているが、一過性のものであることには変わりない。
最低賃金に近い給与水準で生活している労働者への影響が大きく、生存権への動揺も与えている。労働者の生活を守るためにも、円安の進行とそれによる「悪い物価高」を改善させることも必要である。
2023(令和5)年8月31日に開催された第21回新しい資本主義実現会議で、岸田総理が「2030年代半ばまでに最低賃金額の全国加重平均が1500円となることを目指す。」と述べた。政府は、2020(令和2)年までの目標であった全国加重平均1000円が遅れた原因を振り返り、今から具体的な方策を検討すべきである。さらに、現在の物価の急上昇を考えると、1500円を実現する目標を2030年半ばと設定するのでは遅いという意見も出されている。
当会は、栃木県の最低賃金額について、全国との格差を図るためにも、前年と比べ46円を超える引き上げをして2024(令和6)年において1000円を超えること、来年以降については、実質賃金がプラスとなる水準での大幅な最低賃金の引き上げをしていくことを求める。
2024(令和6)年7月1日
栃木県弁護士会会長 石井信行