栃木県弁護士会からのお知らせ

憲法記念日を迎えるにあたっての会長声明

 日本国憲法が施行されてから既に70年以上が経過した今日、改めて憲法の価値と意義を再確認することが必要である。
 憲法は、個人の尊厳を最大の価値とし、国民の基本的人権を保障し、平和と民主主義を守る重要な基盤であり、わが国において必要かつ不可欠なものである。しかしながら、昨今、国際社会においては平和と安全保障に重大な影響を及ぼす状況が続き、また、わが国においても不平等や差別の問題が依然として存在するなど、憲法が掲げる理念を実現するために取り組まなければならない問題は少なくない。
 昨年2月、ロシア連邦によるウクライナへの侵攻は世界に衝撃を与えた。これを機に、わが国では抑止力としての反撃能力の保有や国民の負担を伴う防衛費の増大などの議論が活発化している。しかしながら、憲法9条の恒久平和主義や専守防衛の理念は、独善的な暴力の歴史ともいうべき太平洋戦争の反省から、二度と戦争の惨禍を繰り返さないために、悲壮な決意のもと構築されたものである。弁護士の使命は、基本的人権の擁護と社会正義の実現であり、恒久的な平和のもとで生きることこそが基本的人権の源泉である以上、我が国における軍事力を拡大する方向の現下の情勢に対し、当会は憂慮するものである。国際紛争の解決のためには、安易な武力行使に頼るべきでなく、平和的な解決を追求していくことが必要である。
 また、近時、人種差別的なヘイトスピーチやヘイトクライム、SNSによる誹謗中傷、性的指向や性別を理由とする不合理な扱い等、不条理な差別が日常的に存在し、社会問題化している。多様な考え方、働き方、多様な性や多様なライフスタイルが存在している現代においては、お互いの多様性や違いを認め合うことが個人の尊厳の理念に適うものであり、謂れなき差別は許されるものではない。弁護士は、その人権の護り手としての使命を自覚し、必要な法的支援を提供するなどして、より一層邁進しなければならない。
 当弁護士会は、憲法記念日を迎えるにあたり、改めて日本国憲法の恒久平和主義の堅持を宣言するとともに、基本的人権の擁護と社会正義の実現という弁護士の使命を果たすべく、積極的な活動を続けていく所存である。

2023年(令和5年)5月3日
栃木県弁護士会  
会長 山下 雄大