栃木県弁護士会からのお知らせ

憲法記念日を迎えるにあたっての会長声明

 本日、日本国憲法の施行から75周年の憲法記念日を迎えた。
 日本国憲法は、個人の尊厳を最大の価値とし、国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義を基本原理とし、立憲主義を基本理念としているもので、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士により構成される弁護士会として、今後とも、立憲主義を堅持し、国民主権に基づく政治を実現することにより個人の人権を守る立場から、引き続き、人権擁護のための活動を積極的に行っていく決意である。
 ところで、本年2月24日、ロシア連邦は、ウクライナに対し国連憲章に明確に違反する軍事侵攻を開始した。その結果何らの罪のない多くの市民の生活が破壊され、命が奪われた。それは目を覆いたくなる光景であり、戦争は究極の人権侵害であることを改めて再認識させるものであった。当会は、今回のロシア連邦のウクライナ侵攻に対し断固として抗議するとともに、わが国政府が、この戦争に反対する諸国家及び諸国民と連帯し、日本国憲法の精神に基づく武力に依らない外交交渉等により一刻も早い戦争の終結と市民に平和が戻るため、最大限の力を注ぐことを強く望む。
 しかしながら、ロシア連邦によるウクライナ侵攻のこの事態に接し、わが国においては、今回の事態を奇貨として日米同盟のさらなる強化や非核3原則に固執しない核共有への動きが生じつつある。こうした動きは、憲法9条の解釈変更により憲法学者等の法律専門家を含む多くの国民の反対を押し切って制定された極めて違憲性の高い集団的自衛権を容認する新安保法制の制定とその実施や、近時高まっていた敵基地攻撃能力を備えた防衛力保持の議論とともに、恒久平和主義・立憲主義を損なう流れの一環であって、憂慮すべき事態である。
 わが国は、日本国憲法において、多大な犠牲をもたらした太平洋戦争の反省から、「日本国民は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、わが国の安全と生存を保持することを決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷属、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。」と述べ、戦争放棄と戦力不保持を定めて恒久平和主義をとることとしたのであり、今後予想されるわが国をとりまく国家間の紛争に対しても、武力による解決ではなく、憲法の定める基本原則に基づき平和的解決を追求することに立ち返る必要がある。
 日本国憲法施行後75周年の年を迎えるにあたり、改めて、今後も憲法の平和に対する基本原理が堅持されることの重要性を訴えるものである。

2022年5月3日
栃木県弁護士会 会長 安 田 真 道