栃木県弁護士会からのお知らせ

特定商取引法・預託法の改正法の成立を受けて消費者保護を求める会長声明 

2021年6月24日
栃木県弁護士会会長 横堀 太郎


 令和3年6月9日,「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律」(以下,「改正法」という。)が参議院本会議において可決・成立した。
 改正法は,詐欺的定期購入について,申込み画面に表示すべき事項等を規制し,罰則や契約の取消権,適格消費者団体の差止請求権を認めた点や,送り付け商法において事業者が直ちに返還請求権を失うと規定した点,販売預託商法について厳格な規制を設けた点等において,消費者被害の予防・救済に資するものと考えられる。
 しかし,同改正法のうち,消費者の承諾を要件として契約書面等の電子交付を認める条項は,消費者庁の設置した検討会において何の議論もなかったにもかかわらず突如盛り込まれ,多くの消費者団体,弁護士会等から反対の意見が出されたにもかかわらず,修正されないままとなった。かかる改正により,契約内容やクーリング・オフについて消費者に十分に認識させ,クーリング・オフの機会を与えるという書面交付義務の消費者保護機能・警告機能が骨抜きになる恐れがあり,大変遺憾である。
 今後,改正法に基づく政省令・ガイドラインを制定するに当たっては,幅広い関係者から意見を聴取し,悪質業者の手口や消費者被害の実態を十分に考慮して,消費者保護の観点から,各取引類型の特徴に応じた慎重かつ透明性のある議論を行うことを求める。特に,契約書面等の電子交付の消費者の承諾については,参議院地方創生及び消費者問題に関する特別委員会の附帯決議に示されたように,電磁的方法で提供されるデータが契約内容を記した重要なものであること,契約書面等を受け取った時点がクーリング・オフの起算点となることを書面等により明示的に示すことなど,書面交付義務が持つ消費者保護機能が確保されるよう慎重な要件設定を行うことを求める。また,高齢者などが事業者に言われるままに本意でない承諾をすることがないよう,家族や第三者の関与を要件とするなど,消費者保護機能を確保するための慎重な要件設定を行うことを求める。
以上