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検察庁法改正案に反対する会長声明
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1 政府は、2020(令和2)年3月13日に国家公務員法等の一部を改正する法律案を閣議決定し、同日国会に提出した。
同法律案には検察庁法の一部改正が含まれている。改正案では、全ての検察官の定年を63歳から65歳に引き上げた上、63歳に達した段階での役職定年制を設けている。しかし、内閣又は法務大臣が「職務の遂行上の特別の事情を勘案し」「公務に著しい支障が生じる」と判断した場合には、役職定年のみならず、定年を超えても当該官職での勤務延長が可能とされている。
2 検察官は、公訴権を独占する機関であり、憲法上、国会議員や国務大臣も刑事訴追の対象から外されていないことからすれば、権力犯罪に対しても厳正に検察権を行使するため、検察官に対する政治的な圧迫や干渉は排除されなければならない。したがって、検察官には、準司法的性格があることに鑑み、立法府や行政府からの干渉を受けない高度の独立性、中立性及び公正性が要請される。
ところが、本改正案は、いわば時の政府の意向次第で、明確な基準もなく、検察官を当該官職のまま引き続き勤務させることを容認するものである。戦後の新憲法下において、検察庁法が戦前の旧裁判所構成法における検察官の定年延長制度を敢えて規定しなかったにもかかわらず、本改正案によれば、その趣旨は没却され、検察官の独立性、中立性及び公正性は著しく毀損し、検察官に対する国民の信頼、ひいては刑事司法全体に対する国民の信頼は、根底から揺るがされる。
3 当会は、同月26日、東京高検検事長の定年延長に関する閣議決定に対し、法治主義や三権分立に反するとともに、検察官の政治的な中立性や独立性を侵し、刑事司法に対する国民の信頼を損なうとして、強く抗議し、速やかな撤回を求める会長声明を発した。今般の法改正案は、同じ過ちを繰り返した上にそれを固定化するものであって、到底看過できるものではない。
4 よって当会は、憲法上の要請である検察官の独立性、中立性及び公正性を著しく損なう本改正案に断固として反対するものである。
2020年(令和2年)4月23日
栃木県弁護士会
会長 澤田 雄二