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死刑執行に強く抗議する会長声明
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1 2018年7月6日,東京拘置所において3名,大阪拘置所において2名,広島拘置所において1名及び福岡拘置所において1名の合計7名に対し,死刑が執行された。7名同時の死刑執行は現行憲法下で最多である。
2 死刑を執行された者のうち6名は再審請求中であった。死刑が確定した者が後に再審請求したことによって,再審無罪となったケースは1980年代に4件ある。近時には袴田巌氏の事件において,静岡地方裁判所が再審開始の決定をしており,その後,東京高等裁判所において再審開始決定が取り消されたものの,弁護人側の特別抗告により最高裁判所における審理が続くことになる。我々は,これらの事件から,誤判・冤罪の危険性が現実的なものであることを痛感した。誤判・冤罪の防止という観点からは,受刑者が再審請求中であることは特に重視すべきであり,従来は再審請求中の死刑確定者については,死刑執行が回避される傾向があったが,これを覆す昨今の死刑執行は極めて遺憾である。
3 また,今回執行された者の中には,日本弁護士連合会が,2018年6月18日付けで,心神喪失の状態にある疑いが強いことから,死刑の執行を停止するよう,法務大臣に対し人権救済申立事件の勧告をした者が含まれている。同勧告で述べられているとおり,適正手続保障の観点からは,法務省から独立した機関において,死刑確定者が心神喪失の状態にあるか否かを判定する必要があり,その点について十分な議論を経ることなく,死刑が執行されたことは極めて遺憾といわざるを得ない。
4 当会では,2016年4月21日及び同年11月24日の2度にわたり「死刑執行に抗議する会長声明」を,さらに,2017年7月27日及び2018年1月26日の2度にわたり「死刑執行に強く抗議する会長声明」を発出し,それらの声明の中で,死刑廃止が国際的な潮流であること,死刑制度に関する情報の開示が不完全であり,その存廃についての十分な国民的議論が必要不可欠であることを訴え,死刑の執行を直ちに停止すべきであると抗議した。また,2016年10月7日には,日本弁護士連合会が,福井県で行われた第59回人権擁護大会において,「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,国連犯罪防止刑事司法会議が日本で開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきこと,死刑を廃止するに際して死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討すること,などを政府に求めた。そして,2016年12月19日,国連総会においては,全ての死刑存置国に対し,「死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議が117カ国の賛成多数で採択された。それにもかかわらず,政府は相も変わらず国際的な趨勢を無視し続け,死刑制度に関する情報公開や,国民的議論を巻き起こすような取組を一切行わず,死刑執行に及んだことは遺憾としかいいようがない。
5 以上のとおり,当会は今回の死刑執行に強く抗議する。
2018年(平成30年)7月19日
栃木県弁護士会
会 長 増 子 孝 徳