栃木県弁護士会からのお知らせ

平成29年度司法試験に厳正な合格判定を求める会長声明

 当会は、平成27年5月23日、法曹養成制度の改善を求める総会決議において、政府に対し、司法試験合格者を当面1000人程度に減少させ、司法試験の受験回数の制限を撤廃するなどの法曹養成制度の抜本的な見直しを求めたところであるが、昨年度の司法試験合格者数は1583名であり、依然として当会が求めた1000名程度という数字に至っていない。
 政府の法曹養成制度改革推進会議は、平成27年6月、「法曹人口の在り方について(検討結果取りまとめ)」において、司法試験合格者数を年間1500人程度は輩出されるよう必要な取組を進める、との提言を行った(以下「推進会議決定」という。)。昨年度の司法試験合格者数が平成27年度の1850人から減少しつつも、1583人とされたのは、推進会議決定を取り入れたものと推察される。
 本年度の司法試験短答式試験においては、受験者数5967人に対して、合格者数は3927人であり、昨年度の受験者数6899人に対する合格者数4621人と比較して、受験者数・合格者数ともに85%程度まで大幅に減少している。このような司法試験の受験者数の減少は、当会の上記総会決議の理由においても触れたとおり、法科大学院を中核とする法曹養成制度が十全に機能しているとは言えず、法科大学院に進学することが時間的・経済的に大きな負担となることも相まって、法曹志望者の減少を招いていることも大きな要因の一つであると言うべきである。
 本年度の司法試験合格者数を、推進会議決定に従って1500名程度を維持するとすれば、昨年度よりも合格率は上昇することとなるが、そのような結果となれば、本年度の合格者の合格水準が昨年度よりも低下することを意味することとなる。推進会議決定においては、司法試験合格者数を1500名程度輩出されることを求めつつも、輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものではない、としていることを看過してはならない。
 司法は、国民の権利擁護や社会正義を守る任務を負うものであり、その司法を担う法曹の質の維持・向上は、国民にとっても重大な課題・要請である。現状のように法曹志願者が急減すれば、その中に有為な人材の絶対数が減少するのも当然であり、法曹の質の確保に懸念が生ずることになる。しかし、そのような中でも、法曹の質は可能な限り高く確保されなければならない。
 以上から、当会は、本年度司法試験の合格判定にあたっては、1500人程度とされる合格者数の維持のみが優先されるべきでなく、司法を担う法曹の質の維持・向上の要請を踏まえた厳正な判定が行われることを求めるものである。

平成29年(2017年)7月27日
栃 木 県 弁 護 士 会
会 長 近 藤 峰 明