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死刑執行に抗議する会長声明
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本年3月25日,大阪拘置所及び福岡拘置所において,各1名に対する死刑の執行が行われた。
現在,死刑を廃止又は停止している国は140か国であり,死刑存置国58か国の2倍以上に上り,死刑廃止は国際的な潮流となっている。また,OECD加盟国のうち,死刑制度を存置している国は,日本・韓国・米国の3か国のみであるが,韓国は17年以上にわたって死刑の執行を停止,米国の19州は死刑を廃止しており,死刑を国家として統一的に執行しているのは日本のみである。こうした状況の中で,国際人権(自由権)規約委員会は,2014年,日本政府に対し,死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。また,国連総会は,同年12月18日,全ての死刑存置国に対し,「死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議を過去最高数である117か国の賛成多数で採択した。
日本弁護士連合会は,2015年12月9日,岩城法務大臣に対し,「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し,死刑の執行を停止するとともに,死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し,死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し,世界の情勢等について調査するなどし,死刑制度の在り方について結論を出すこと,そのような議論がなされる間,死刑の執行を停止すること等を求めていた。
このような勧告,決議案及び要請に対し,政府は,慎重な議論を尽くさず,2015年12月18日に2名の死刑執行を行ったばかりでなく,12月18日の執行からわずか4か月足らずの間にふたたび死刑執行を行った。このことは,死刑廃止が国際社会の潮流となっていることを無視し,国際社会の要請を蔑ろにするものであり,極めて遺憾である。
また,2014年3月には,いわゆる袴田事件について,静岡地方裁判所が再審開始決定をし,袴田巌氏は48年ぶりに釈放された。袴田事件によって,日本社会は,冤罪の恐ろしさとともに死刑という不可逆的な刑罰のもつ問題点を強く認識したはずである。
特に,裁判員制度においては,死刑を法定刑とする事件も対象となるので,一般市民から選出された裁判員が死刑判決に関与することになる。そのため,裁判員制度の実施にあたっては,死刑制度に関する的確な情報のもと,死刑制度の存廃についての十分な国民的議論が尽くされることが必要不可欠である。
しかしながら,現在においても,死刑制度に関する情報の開示は不完全であり,死刑制度の存廃についての十分な国民的議論が尽くされているとは言い難い。
当会は,このような我が国の死刑制度に関する現状を踏まえ,政府に対し,死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くされるまでの間,死刑の執行を停止することを求めるものである。
2016年(平成28年)4月21日
栃木県弁護士会
会 長 室 井 淳 男