栃木県弁護士会からのお知らせ

東海第二原子力発電所の廃炉を求める会長声明

1 はじめに
 2011年3月11日に発生した福島第一原子力発電所の事故(以下「福島原発事故」という。)によって同発電所から放出された大量の放射性物質は、福島県内だけでなく、栃木県を含む関東地方にも降り注ぎ、広範囲にわたり多数の住民の生活基盤を奪い去るという未曽有の被害をもたらした。
 栃木県内では、放射性物質による汚染によって、農水産業や観光業などに対して深刻な被害が発生し、産業の低迷や住民の生活難が生じているだけでなく、住民は低線量被曝・内部被曝による危険にさらされている。
 福島原発事故は、多数の住民の財産、生活を奪い、生命・身体に影響を及ぼす人権侵害の最たるものというべきである。
 当会は、2012年4月30日に脱原発市民集会を主催する等、脱原発に向けた取り組みを行ってきたが、上記のとおり、栃木県が福島原発事故に起因する放射性物質の汚染による被害を受けたことに鑑み、栃木県の最も近い県境まで32kmと栃木県から最も近い位置にある、日本原子力発電株式会社が茨城県東海村で操業する東海第二原子力発電所(以下「東海第二原発」という。)の危険性については、人権擁護の観点から重大な関心を持つものである。

2 東海第二原発が想定を上回る地震・津波に襲われる危険性
 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の際には、東海第二原発でも、押し寄せた津波により外部電源が全て停止し、非常用電源や冷却機能の一部も喪失するなど、一歩間違えれば福島原発事故と同様の重大事故に至る、極めて危険な事態が発生していた。
 そして、東海第二原発に関しては、以下のような地震発生の可能性が、複数の科学者・専門家により指摘されており、今後、東北地方太平洋沖地震を上回る規模の地震や津波が東海第二原発を襲う可能性も否定できない。
  ‥賈銘亙太平洋沖地震の際、茨城県沖の南部と房総沖のプレート境界は動いていないため、当該地域が
  地震の空白域となり、プレート境界が近々動く可能性がある。
 ◆‥豎ぢ萋鷂業の敷地周辺に存在する断層のうち、いくつかは、連動して活動する可能性があり、そうなった
  場合には、巨大な地震が発生し、東海第二原発の敷地に重大な影響を与える可能性がある。
 東北地方太平洋沖地震が想定をはるかに上回る規模の地震であったことからも明らかなように、地震の予測には限界があり、起こりうる最大の地震というものを想定すること自体困難である。そうである以上、これまで東海第二原発で想定されてきた規模を上回る地震、津波が原発を襲い、重大事故に至る可能性は常に存在するのである。

3 東海第二原発の老朽化
 また、東海第二原発は、運転開始から既に34年が経過しており、老朽化が進んでいる。そもそも原子力発電所の設計当初想定されていた運転期間は30年であり、その年数を超えて運転することは、安全性確保の観点から問題である。
 実際に、東海第二原発においては、2005年に実施された定期点検において、炉心シュラウドサポート部外面の縦溶接線3箇所にひび割れが認められた。
 炉心シュラウドは、原子炉の圧力容器内部に取り付けられ、内部に燃料集合体や制御棒などを収納するステンレス製の構造物である。圧力容器内の構造物・機械を機械的に支える役割を有している。
 2009年に実施された定期点検でも、炉心シュラウドサポート部内面の縦溶接線にひび状の指示模様7箇所が確認され、超音波探傷検査を実施したところ、新たに内面に21箇所のひび割れが確認されている。そして、2009年に、2005年に実施された定期検査で確認された3箇所のひび割れを計測した結果、わずか4年半の間に、長さにして平均値が約1.32倍、最大値が約1.42倍、深さにして平均値が約1.34倍、最大値が約1.36倍増加していることが判明した。
 炉心シュラウドにひび割れが発生し、これが進展して炉心シュラウド自体の破断に至った場合、その内部に収納された燃料集合体と制御棒の位置関係にずれが生じ、下から垂直に挿入される制御棒が燃料集合体の間に入ることができず、炉心での核分裂反応が増加し、そのまま核暴走事故へと発展する。
 このように、東海第二原発の場合、炉心シュラウドに存在するひび割れが、巨大地震により拡大し、深刻な事態に至る可能性があるのである。

4 東海第二原発で重大事故が発生した場合に想定される被害
 以上のように、東海第二原発では、巨大地震の発生等により重大事故が発生する可能性があるところ、仮に重大事故が発生した場合には、福島原発事故を上回る規模の被害となることは確実である。
 東海第二原発の場合、半径30km圏内の市町村人口は106万人にのぼり、原発周辺地域としては全国一の過密地域である。半径150km圏内にある栃木県や首都東京を含む関東圏で考えると、その人口は4245万人であり、原発周辺地域としては世界一の人口密集地となる。
 もし、東海第二原発で、福島原発事故のような重大な事故が発生した場合には、住民の速やかな避難が求められるが、立地県の茨城県知事が、2012年3月5日の県議会で、「茨城県内のバスをすべて動員しても1回に24万人しか運べず、全住民を一斉に避難させることは不可能」と答弁していることからもわかるように、住民の速やかな避難は到底不可能である。
 そのため、東海第二原発で重大事故が発生した場合には、膨大な数の住民が長期間、高い放射線量に被曝するという、前代未聞の惨事に至ることになる。

5 結論
 以上のように、東海第二原発は、巨大地震発生の可能性の点からも、施設の老朽化の点からも、重大事故が発生する可能性があり、重大事故が発生した場合には、栃木県を含めた広範な地域で福島原発事故を上回る規模の被害が発生する危険性があるのである。
 よって、当会は、東海第二原発を再稼働させることなく、廃炉にすることを求める。
2013(平成25)年4月24日 
栃木県弁護士会    
会 長 橋 本 賢 二 郎