栃木県弁護士会からのお知らせ

司法修習生に対する給費制の復活を求める会長声明

 平成24年11月27日から、第66期司法修習が開始され、この栃木県においても、24名の司法修習生が配属された。

 従来、新第64期及び現行第65期までの司法修習生に対しては、司法修習中の生活費等の必要な費用が国費から支給されていた(以下「給費制」という)。

 戦後改革の中における新たな司法制度の役割、司法機能の充実のために果たすべき法曹の責務と一体性等を踏まえ、統一的修習制度が構築され、その中で司法修習に専念できるようにするために給費制が実施された。現在においても、司法修習生は、司法を担う法曹としての高い専門性を習得するため1年間司法修習に専念する義務を負い(裁判所法第67条第2項)、兼業・兼職が禁止され、ほかに収入を得る道はない。このように弁護士を含む法曹養成制度は、国家のために必要不可欠な人的インフラ整備として、国家の責任をもって行われるべきものとされていた。

 しかし、一昨年11月に司法修習を開始した新第65期の司法修習生から、給費制は廃止され、司法修習費用を貸与する制度に移行した(以下「貸与制」という)。

 この改正に際しては、衆議院法務委員会が「我が国の司法を支える法曹の使命の重要性や公共性に鑑み、高度の専門的能力と職業倫理を備えた法曹を養成するために、法曹に多様かつ有為な人材を確保するという観点から、法曹を目指すものの経済的時間的負担を十分考慮的し、経済的な事情によって法曹の道を断念する事態を招くことがないようにすること」との付帯決議をしていた。

 上記付帯決議に基づいて政府に設置された法曹養成制度検討会議において、現在、法曹養成制度全体のあり方について検討が行われており、その中で給費制の復活も含め司法修習生に対する経済的支援が議論されている。

 法曹養成制度検討会議では、修習専念義務の在り方も議論されようとしている。しかし、司法修習制度が法曹の質を確保する上で極めて重要な制度であり、司法修習生には平日日中以外にも自己研鑽が不可欠であるから、修習専念義務は不可欠な制度である。また修習期間が1年間に短縮され非常に密度の濃いものになっていることからすれば、仮に修習専念義務を免除しても修習期間中にアルバイトに従事することは事実上困難であり、問題の解決にはならない。司法修習生に対しては、司法修習を課す国が経済的支援をする方向で議論をするべきである。

 当会は、法曹養成制度検討会議に対し、法曹の使命・公共性、多様・有為な人材確保などにも言及した上記付帯決議の趣旨を踏まえた議論を行うよう求め、また国に対して給費制を復活させるとともに、貸与制の下で修習した司法修習生に対しても遡及的に適切な措置を取るよう強く求めるものである。

平成25年(2013年)1月23日
栃木県弁護士会
会 長 蓮 田 勝 美