栃木県弁護士会からのお知らせ

市町村暴力団排除条例の早期制定を求める会長声明

1.  声 明
 栃木県内14市12町のうち、暴力団排除条例が制定されていない市町においては、すみやかに暴力団排除条例を制定するように求める。

2.  理 由
(1) 暴力団は、その団体の構成員である暴力団員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第2号)であって、その共通した性格は、その団体の威力を利用して暴力団員に資金獲得活動を行わせて利益の獲得を追求するところにある。
 暴力団が市民生活や企業・行政活動に触手を伸ばすようになって久しく、栃木県内においても、暴力団員による銃器発砲事件が発生するなど、暴力団は、市民生活や企業・行政活動に対する重大な脅威となっている。

(2)栃木県弁護士会は、平成5年に、全国で初めて暴力団組長の使用者責任を認める判決を勝ち取るなど、暴力団排除活動に積極的に取り組み、平成14年1月30日には、栃木県警及び(公財)栃木県暴力追放県民センターと、民事介入暴力事案等に対する連携についての協定を締結し、暴力団排除活動の支援を継続してきた。

(3)現在、暴力団排除の動きは、全国に広がっており、平成23年10月1日をもって、全国47都道府県で暴力団排除条例が施行され、栃木県においても、平成23年4月1日より暴力団排除条例(以下、「県条例」という)が施行されるに至っている。
 同条例では、青少年の健全な育成を図るための環境を保全するための措置のひとつとして、「暴力団事務所は、学校や公民館などの施設の敷地の周囲200メートルの区域内においては、これを開設し、運営してはならない。」として、暴力団事務所の開設に距離制限を設け、更に、県民個々人が暴力団に利益を供与したり暴力団の活動を助長したりする行為を禁止している。そのような禁止規定は、当然、栃木県が県職員等への不当な要求に対して毅然たる措置をとること、県の契約事務における暴力団排除、給付金の給付等における暴力団排除及び公の施設における暴力団排除を要請するものである。

(4)しかしながら、現状において県条例の制定だけでは、市町村職員等への不当な要求に対する措置、市町村の契約事務における暴力団排除、給付金の給付等における暴力団排除及び公の施設における暴力団排除を全うすることができない。また、青少年に対して、暴力団の危険性及び排除の重要性について教育を行うことも、市町村単位で行わなければ不十分である。このような現状に照らし、暴力団の資金獲得活動を規制し、暴力団組織の弱体化をはかり、青少年の健全な育成をはかるためには、県条例のみならず、栃木県内の14市12町のすべてにおいて、暴力団排除条例が制定される必要がある。
 また、暴力団排除対策は、社会全体で取り組むことで効果を発揮するものであり、県内全ての市町が連携して対策を講ずる必要がある。すなわち、市町村条例を整備しない自治体が一つでもあると、その市町に暴力団員やその共生者を招き入れることとなり、公共事業参入による資金獲得活動を行うことを許すことになるなど、その地域で暴力団がはびこり、青少年を守ることや市民生活を守ることが難しくなる。栃木県内の市町村暴力団排除条例が効果を発揮するためには、県内14市12町のすべてが足並みをそろえて、暴力団排除条例を制定することが不可欠なのである。

(5)現在、暴力団排除条例が制定された県内の市町は、宇都宮市、大田原市、小山市、さくら市、佐野市、栃木市、那須烏山市、市貝町、那珂川町、那須町、野木町、益子町、茂木町の13市町であり、また、議会上程が予定されている市町は、3市町である。残る10市町においても、速やかな条例制定が望まれる。

(6)栃木県を含む全国47都道府県で暴力団排除条例が施行されたこの時期を逸することなく、栃木県内の14市12町のすべてにおいて、暴力団排除条例を制定することを求めるものである。

平成24年1月25日
栃木県弁護士会
会  長   横 山  幸 子