栃木県弁護士会からのお知らせ

足利事件の無罪判決に関する会長談話

1.本日、宇都宮地方裁判所は、足利事件の菅家利和さんに対して再審無罪の判決を言い渡しました。この判決は、警察庁科学捜査研究所のDNA鑑定の結果が誤りであるだけではなく、具体的な実施方法にも疑問があるとして証拠能力そのものを否定し、さらに、菅家さんの捜査段階と公判廷における自白は信用性が皆無であり、虚偽であることは明らかであるとして、菅家さんは、一点の曇りもなく無罪であることを宣言しました。また、判決宣告のあと佐藤正信裁判長は、菅家さんの真実の声に十分に耳を傾けられず、17年半もの長きにわたり自由を奪う結果になったことを、菅家さんに率直に謝罪しました。
  ここに、1991年12月の逮捕から、18年余を経てようやく菅家さんの汚名が完全に晴らされたことは本当に喜ばしいことです。また、菅家さんの再審弁護団のご苦労とご努力に心から敬意を表します。
 
2.菅家さんが17年半もの長きにわたり、無実の罪で身体を拘束されたことの苦しみと無念さがどれだけ大きなものであったかは、察するにあまりあります。足利事件では、逮捕直後から一審、控訴審、上告審、再審のいずれの段階でも、菅家さんが無罪であることを示すいくつかの材料がありました。しかしながら、誤ったDNA鑑定を過信した結果、捜査機関は虚偽の自白を誘導し、また、裁判所も再度の鑑定申請を採用しないなど、誤った判断を4回も繰り返した司法関係者の責任は極めて重大なものであると言わざるを得ません。われわれ弁護士も、最善の弁護を尽くしたのかどうか、改めて厳しく問われていることを真摯に受け止めなければなりません。
 
3.無実の人が菅家さんと同じ苦しみを受けることが二度とあってはなりません。
私たち弁護士は、菅家さんの苦しみと無念さを肝に銘じて最善の弁護に努めるよう研鑽を重ね努力をしていきます。また、冤罪の原因となる虚偽の自白が繰り返されないよう、取調べ過程全部の可視化など、適正な捜査を強く求めるとともに、なぜ足利事件のような冤罪事件が繰り返されるのか、第三者機関を設置してその原因を徹底的に究明していくことも訴えていきます。
 
4.晴れて潔白が証明された菅家さんが、失った18年余の月日を取り戻し、穏やかで幸せな生活を送られますよう、心からお祈りいたします。
 
  2010年(平成22年)3月26日
栃木県弁護士会
 会長 田島二三夫