栃木県弁護士会からのお知らせ

働き方改革関連法案に反対する会長声明

 現在,国会において働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(以下,「法案」という。)が審議されているが,この法案は以下のような問題点がある。

 まず法案は,労使協定(36協定)により,労働時間を延長して労働させることができる限度時間を「1箇月について45時間及び1年について360時間」とするものの,臨時的な場合に,1カ月100時間未満,1年720時間を超えない範囲での例外を認め,また1年のうち6カ月については当月及び前1カ月ないし5カ月の累計のすべての平均が1カ月80時間を超えない範囲での例外を許容している。さらに,休日労働を含めると,1カ月平均80時間,1年960時間までの時間外労働が可能とされている。かかる例外として許容される時間外労働の限度時間は,厚生労働省が過労死の認定基準として定める時間外労働時間数(いわゆる過労死ライン)に匹敵する時間数であり,かえって過労死ラインまでの時間外労働を許容することになりかねない点で極めて問題である。
 また,新たな技術,商品又は役務の研究開発にかかる業務については,上限規制を適用せず,建設業務従事者,自動車運転業務従事者及び医師について規制を5年間猶予した上で規制内容を緩和している点も問題である。

 次に法案には,高度プロフェッショナル制度の導入についても盛り込まれている。同制度は,一定の年収(報道等によれば1,075万円以上とされる見込み)を有する労働者が,高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に,労働時間,休日,深夜の割増賃金等の規定を適用除外とするというものである。
 しかし,労働時間の規制は労働者の健康を保持することを目的としており,年収の多寡によって左右されるべきものではない。さらに,今後要件の緩和などにより,適用対象者が拡大することへの歯止めがないなど,問題点が多い。

 近時,過重労働が世間の耳目を集め,労働者保護の要請が強まっているにもかかわらず,法案は,上記のとおり,それとは逆行した改正内容を含んでおり,当会は強く反対する。

2018年(平成30年)5月17日
栃木県弁護士会
会長 増子孝徳