栃木県弁護士会からのお知らせ

死刑執行に強く抗議する会長声明

1 2017年12月19日,東京拘置所において,2名の死刑が執行された。両名については,以下のとおり,死刑の執行が拙速になされたというべきであり,当会は強く抗議をする。

2 死刑を執行された2名は,いずれも再審請求中であった。死刑が確定した者が後に再審請求したことによって,再審無罪となったケースは1980年代に4件あり,近時にも2014年の袴田巌氏の事件において,静岡地方裁判所が再審開始の決定をしており,我々は,誤判・冤罪の危険性が現実的なものであることを痛感した。誤判・冤罪の防止という観点からは,受刑者が再審請求中であることは特に重視すべきであると考える。再審請求中の死刑確定者については,従来死刑執行が回避される傾向があったにもかかわらず,これを覆した今回の死刑執行は極めて遺憾というべきである。

3 また,うち1名については,犯行当時19歳の少年であり,犯行当時少年だった者に対する死刑執行としては,20年ぶりとなる。少年事件においては,少年の成育環境など,成人の事件とは異なった視点からの配慮を必要とする。それにもかかわらず,少年事件における死刑の執行の妥当性について十分な議論を経ることなく,拙速に死刑が執行されたことは極めて遺憾といわざるを得ない。

4 当会では,2016年4月21日及び同年11月24日の2度にわたり「死刑執行に抗議する会長声明」を,さらに,2017年7月27日にも「死刑執行に強く抗議する会長声明」を発出し,死刑廃止が国際的な潮流であり,死刑制度に関する情報の開示が不完全であり,その存廃についての十分な国民的議論が必要不可欠として,死刑の執行を直ちに停止すべきとした。また,2016年10月7日,日本弁護士連合会は福井の第59回人権擁護大会において,「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,国連犯罪防止刑事司法会議が日本で開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきこと,死刑を廃止するに際して死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討することなどを政府に求めた。そして,2016年12月19日,国連総会においては,すべての死刑存置国に対し,「死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議が117カ国の賛成多数で採択された。にもかかわらず,政府が相も変わらず国際的な趨勢を無視し続け,死刑制度に関する情報公開や,国民的議論を巻き起こすような取り組みを一切行わないばかりか,前記のような問題のある死刑執行に及んだことは遺憾としかいいようがない。

5 以上のとおり,当会は今回の死刑執行に強く抗議する。

2018年(平成30年)1月26日
栃木県弁護士会
会長 近 藤 峰 明